2020年3月24日火曜日

じどうしゃのおはなし 第3話すぽーつかーとGT(その2)

 しかしレース界の革命児といわれたフェラーリにも悩みが
ありました。F1を始め、ルマンなどあらゆるレースで強豪相
手に次々勝ち抜くには最新鋭の技術で作った〈勝てる〉車を
次のレースまでの1年以内に開発しなければならず、まだ駆
け出しのフェラーリは、その資金がすぐに底をついてしまい
ます。そこで思いついたのは、いらなくなり山積みになった
今年レースを終えたチャンピオンカーや過去のチャンピオン
カ―など勝てなくなったゴミ車(エンツォ主観)をそのまま
貴族や大富豪に高く売りつけることでした。
 いざ、販売してみると、本物の優勝車が手に入るし、周り
からもイメージが良い為、世界中の富裕層は大喜びで買いに
殺到します。飛ぶように売れて内心『あんなゴミを馬鹿な
人達だなぁ』と眺めていたエンツォでしたが、あっという
間に在庫もなくなってしまい、困ってしまいます。
 まずい、しょうがないな…と今度は似たようなレプリカ
を作って暴利で売りつけました。商売上手。
 (※今もそうですが市販車の売値の半分近くは競技車の為
のお布施と呼ばれる開発費(笑))
 でも、貴族や大富豪はわがまま。しばらくすると
『乗り心地が最悪』『内装がめちゃ貧相』『良く壊れる』
『年寄りが乗るには何もかもが固くてくそ重い!』と不満や
苦情が出始めます。 
『アホか、あたりまえだ!! 乗り心地がいい、牛皮貼りで
ローズウッドの豪華絢爛な、運転しやすいレースカーなんか
あってたまるか!! 車に文句言う前にてめえの常識と体力と
腕を磨いて車に合わせやがれ!! レースカーなんてドンガラ
だけで上等。最後の瞬間に1位になってチェッカー振られる
時までもちゃぁバラバラにぶっ壊れようが充分だわ、馬鹿
野郎!!』などと過激なことは思いもせず(笑)、おおせのままに
と、競技車の雰囲気がほのかに香る速い車(笑)を作ったのが
現在のスポーツカ―の元祖フェラーリ様です。
 いまでこそ、ツインカム、ターボ、スーパーチャージャー、
オイルクーラー、インタークーラー、ドライサンプ、
4輪ダブルウィッシュボーンサスペンション、4輪ディスク
ブレーキなど当たり前ですが、このはるか昔にそれらを
すでに市販車で標準装備していたアルファロメオやフェラー
リは最先端でもの凄いメーカーだったわけです。
 そのかわり購入価格も富豪でさえ目の玉が飛び出るほど
高かったですが。
 舗装路もまずまず快適に走れるけど、その気になれば
サーキットへ持ちこんでも楽しめるぞというのがスポーツカ―
の定義です。

 それに対してグラントゥーリズモ→ GTはスホーツカーとは
対照的に貴族や大富豪のわがままを存分に聞いて作った車
で、頑丈な車体、強化したエンジンを載せた車で、有名なとこ
ろだとワーゲンゴルフやレガシィ、アメリカ車(自国の砂漠など
の長距離移動でエンストするのは命に関わる)、などといった
車が該当します。
 特にポルシェは『うちの作るメイン車(911)はグラントゥーリズモで
あってスポーツカーではない』と昔から明言しています。
 安定して快適に遠くの目的地まで高速巡航すること(バカンスに
行ったりビジネス移動)を目的にした車。これが GTの定義です。

 しかし今日では下手な安物スポーツカーを高級GTがぶち抜い
たり、下手な安物GTやコンパクトカーより、よほど快適な高級
スポーツカーがあったりするなど逆転現象がおきていて境が
あいまいになっています。
 うつろいゆく人間様の生活環境に翻弄される自動車の世界、
面白いですね。

byたかにゃん