2020年3月27日金曜日

ネットで拾った泣ける小話

  今日、定年退職を迎えた初老の男が一人、
駅前の立食いそば屋でそばを食べている。
エビの天ぷらが一尾のっかった一杯500円のそば。
30年も前から毎日昼休みこの店に通ってきたが、
一度も店主とは話したことがない。
当然、話す理由などないのだが、今日は自然に
自分と同年齢であろう店主に話しかけていた。
「おやじ、今日…俺退職するんだ」
「へぇ、そうかい」
ほかに話題はない。
会話はそれで途切れた。
静かな時間が流れる。
すると突然、男のどんぶりの上にエビの天ぷらが
もう一尾乗せられた。
「おやじ、いいのか?」
「気にすんなって」
男は泣きながらそばをたいらげた。
涙が止まらなかった。
退職してからも店に通おうと心に決めた。
財布から500円玉を取り出した。
「おやじ、勘定」
「800円」 




byたかにゃん